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理事長挨拶


2024年3月1日
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
理事長 南 博信

2024年2月23日の総会で日本臨床腫瘍学会の理事長を仰せつかりました。

 2度目の理事長の拝命になりますが、この数年間でがん医療が大きく変わりました。例えば、がん遺伝子パネル検査が実地診療に導入され、希少な遺伝子異常を標的とした抗悪性腫瘍薬の開発が促進されました。希少な遺伝子異常をバイオマイカーとして臓器横断的に承認を得た薬剤もあります。臓器横断的に抗悪性腫瘍薬を使用するということは、がんの薬物治療に臓器横断的な視野が必要であることを意味します。患者数が少ないがん種は製薬企業が治験を実施せず、医師主導治験が重要となります。患者数が少ない状況で科学的に有用性を証明する適切な試験デザインを組む技量が求められます。また、免疫チェックポイント阻害薬が多くのがん種に使用されるようになりましたが、全身に副作用を起こすため全身管理能力が今まで以上に重要となります。他診療科との協力体制構築も重要となります。

 がん薬物治療には臓器横断的視野が必要であることは言うまでもありませんが、日本臨床腫瘍学会は各臓器がんの学会の集合体ではありません。幅広いがん種のトレーニングを積んだ専門医が中心となって専門外の領域からも学びがん研究を推進しなければなりません。がん種を横断した有機的な学会活動が必要です。
さらに、がん医療は治療だけではありません。予防や診断、がんとの共生、がん克服後の合併症の予防や管理、家族の支援など取り組むべき課題は山積しています。日本臨床腫瘍学会は、製薬企業や行政、患者さんとそのご家族と協力しながら、これらの課題を議論し解決していく場を提供したいと思います。
 
 本学会の目的は、定款にあるように「がんに対する治療成績の向上を通して、公共の福祉に貢献すること」です。ASCOやESMOと協力しながらグローバルの視点で活動し、日本にとどまらずアジアにおける臨床腫瘍学のハブとなり、定款の目的を達成したいと思います。学会は会員の利益となることは重要です。その上で、がん患者さん、さらには国民に貢献する学会としたいと思います。

 皆様のご協力、ご指導をよろしくお願い申し上げます。