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理事長レター

理事長レター Vol.20 石岡理事長退任のご挨拶

日本臨床腫瘍学会 理事長 石岡千加史理事長の退任にあたり、一言御挨拶申し上げます。

第21回日本臨床腫瘍学会学術集会は2024年2月22日(木)~24日(土)に岩田広治学術集会長(愛知県がんセンター)のもと名古屋で開催され、海外から過去最高の513演題が登録されたほか、海外から(34カ国より)550名の参加者を含む6000名を超える方々の参加登録となり、約4,700名もの皆様に現地にご来場いただき、アジアに冠するがんの学術集会として成功裏に終えることができました。多くの個人および賛助会員の皆さまの御支援のお蔭と心より感謝申し上げます。

さて、私はこの学術集会の終了をもちまして任期により理事長を退任いたします。学会運営にあたり2019年6月から2024年2月までの2期4年8ヵ月、会員の皆様には多大なる御支援を賜り、まずは心から御礼を申し上げます。振り返りますと、私の在任期間のうちの約3年間は多くは新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行により、学術集会をはじめとするJSMOが主催または共催する多くの集会はウェブでの開催となりました。会員同士が直接顔を合わせての意見交換が行える場を皆様に提供できず、学会を運営する立場上、大変忸怩たる思いでおりました。
しかし、この間、インターネットを介したウェブ会議が一気に普及し、理事会や各種委員会は以前よりもむしろ丁寧に開催できるようになり、JSMOの事業の見直しや新規事業の立案が円滑に行えました。特に、国際委員会を中心とする国際化に関わる活動は以前にも増して活発になったほか、専門医制度委員会が担当する新専門医制度に関する課題解決に向けての議論は丁寧に行うことができました。また、学術集会の開催は、ライブ配信及びオンディマンド配信からなるVirtual Congress(第18回)またはハイブリッド開催(第19回以降)になりましたが、国内外から幅広い参加者を募る上で、また新しい学術集会の在り方を考える上で大変良い機会となりました。そして、COVID-19が沈静化した昨年2023年3月に馬場英司学術集会長(九州大学)のもとで福岡にて開催された第20回学術集会は以前の様に活気のある現地開催となりました。
COVID-19の影響は現在もなお続いておりますが、この間、会員の皆様から多くの御意見をいただき新しい学会の在り方を考える上で大変有意義な期間だったように感じます。皆様はもとより、理事、監事、協議員の皆様にはあらためて御礼を申し上げます。

一方、私の在任中に積み残した課題も少なくありません。1つは会員数の減少です。JSMOは創設以降2015年頃までは順当に会員数を伸ばしてきましたが、その後、会員総数は横ばいとなり、最近では減少傾向が認められます。特に、若手会員の入会が伸び悩んでおります。この傾向は日本癌学会(JCA)や日本癌治療学会(JSCO)も同様であり、がん研究に興味を持つ若手育成の会員増加とその育成のため事業としてJSMO、JCAおよびJSCOとのがん関連三学会 Rising Starネットワーキングを2024年1月に開催したほか、今年8月には、将来の臨床研究のリーダーとなる若手医師を対象とするJSMO/ASCO Young Oncologist Workshop (YOW)を4年ぶりに開催する予定です。
もう1つの課題は新専門医制度におけるがん薬物療法専門医の在り方です。2014年5月16日に日本医学会から日本専門医機構に提出された、「がん領域に関する専門医制度についての提言」では、「内科サブスペシャルティに腫瘍内科を新たに加える」ことが明記されています。「内科サブスペシャルティに腫瘍内科を新たに加える」ことに関しては、日本内科学会、日本専門医機構などと協議を重ね、すでに日本内科学会認定医制度審議会および内科系関連13学会協議会で承諾が得られています。しかし、未だにJSMOの専門医は新専門医制度下でスタートを切ることができていません。JSMOの関係者が一丸となって今後も粘り強く日本専門医機構との交渉と調整を重ね、できるだけ早期に新しい専門医としての一歩を踏み出したいと切望します。

私の在任期間にJSMOは学会創設から20年(研究会時代から30年)が経過し、前述の第20回学術集会では20周年を記念するイベントが開催され大変盛会でした。また、この機会に皆様と共にJSMOの歴史や腫瘍内科の発展を振り返り今後を展望する機会に恵まれました(参考文献1~3)。腫瘍内科の更なる発展のためには、専門医として実地がん医療を担う人材はもとより、創薬を担う人材、ゲノム診断はじめとするプレシジョン・オンコロジー(または個別化がん医療)を担う人材、そして幅広いがん関連学際領域に通じる人材の養成が必要です。さらに、JSMOがASCO, ESMOにならぶアジアのMedical Oncologyの一郭となることを目指し、学会の国際化を一層進めるためには欧米やアジアで国際的に通用する次世代のリーダー育成が必要です。JSMOが自ら育てた次世代のがん医療や研究を担う人材とともに発展し、誰一人取り残すことなく世界中の多くのがん患者さんより質の高い医療を提供し、がんの生存率が向上することを祈ります。

4年8ヵ月の間、個人会員や賛助会員はもとより、患者会や非会員の企業、行政や医育・医療機関等の各方面から多大なご支援をいただきました。この場を借りて感謝申し上げます。明日から後任の神戸大学腫瘍・血液内科教授の南博信新理事長に運営を引き継ぎます。南理事長のもとでJSMOをさらに大きく発展させるものと期待していますが、引き続き皆様方のご支援をよろしくお願い申し上げます。

2024年2月24日
公益社団法人日本臨床腫瘍学会
前理事長
石岡千加史

 

参考文献

  1. 公益社団法人日本臨床腫瘍学会. 日本医学会創立120周年記念誌(日本医学会、2022年3月、429頁
    (完全版PDF)https://jams.med.or.jp/jams120th/images/memorial_full.pdf PDF
  2. 石岡千加史、南 博信、大江裕一郎、田村和夫、西條長宏. 腫瘍内科学における20年のあゆみと今後の展望. 日本内科学会創立120周年記念誌(日本内科学会、2023年12月)429頁(完全版PDF)https://www.jsmo.or.jp/file/dl/newsj/3571.pdf PDF
  3. 石岡千加史、南 博信、大江裕一郎、田村和夫、西條長宏 (特別寄稿)日本臨床腫瘍学会の歩み. 癌と化学療法誌 50巻1号(2024年1月号):45~52頁

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