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-患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版-

日本癌治療学会,日本癌学会,日本臨床腫瘍学会(3学会合同作成)
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)とがん診療についてQ&A
-患者さんと医療従事者向け ワクチン編 第1版-

2021年3月29日

はじめに
 がん患者さん、特に治療中のがん患者さんにとって、COVID-19ワクチンを接種したほうがよいのか、有効性はどれほどか、安全性は大丈夫か、副反応のリスクが高まることはないのか、がん治療に影響を及ぼすことはないのかなど、不安や疑問があるかもしれません。主治医を含め医療従事者の方も患者さんから相談されることもあると思います。各学会・団体から様々な考え方や推奨が出されていますが、まだまだデータや科学的知見が乏しいためエキスパートオピニオンにとどまっています。本Q&Aは、国内外の学会や団体のおける考え方、最新の文献を参考に、ワクチンについてできるだけ正しく評価、判断できるように作成しました。多くの皆さまに、早く国内外の専門家による見解をお届けするために、本Q&Aには難しい言葉や用語が含まれたままとなっています。がん患者さんをはじめ医療従事者でない皆さまには、ご自分の状況や心配なことを主治医の先生とご相談される際の資料としてご活用ください。ただし、限られた情報に基づいたエキスパートオピニオンであり、今後の新たな情報の集積と共に変更となる可能性がある点にご留意ください。

A:前向きに検討しましょう。ベネフィットとリスクを理解し、主治医の先生と相談して判断することが大切です。

解説
厚生労働省:治療中の悪性腫瘍は優先接種のひとつにあげられています1)
米国疾病予防管理センター(CDC):がん患者さんは、接種優先第2グループ(第1グループは医療従事者など)に含まれています2)
英国国民保健サービス(NHS):がん治療を受けている患者さんは重症化リスクが高く、優先接種グループに含められています3)
上記のように我が国および海外の行政機関では、がん患者さん(特に治療中)を優先順位の高いグループに含めています。
我が国で出されている「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き、4.1版」4)では悪性腫瘍が重症化因子のひとつに挙げられています。全てのがん患者さんで重症化や死亡のリスクが高いわけではありませんが、高齢者、全身状態(パフォーマンス・ステータス: PS)が著しく不良な方では死亡リスクが高くなることが報告されています5)。また、血液や肺の腫瘍においてリスクが高いという報告もあります6)
現時点で、我が国で承認されているCOVID-19ワクチンはBNT162b2(商品名 コミナティ)です。第3段階の臨床試験に参加した43,540人のうち、がん患者さんは1,395名(3.7%)、BNT162b2接種を受けたがん患者さんは733名と少数でした7)。がん患者さんに対して同ワクチンががんを持たない方と同様の有効性・安全性があるのかについてはまだ明らかでありません。イスラエルで実際に多くの人にBNT162b2が接種され、60万人と非接種者60万人と比較し報告されていますが、両群にはがん患者さんが2%、約12,000人が含まれています8)。全体として90%以上の発症予防効果示され、併存疾患に関する検討では、がん患者さんだけのデータは示されていませんが、3つ以上の併存疾患を有する場合の予防効果は86-89%でありその差はごくわずかです。
COVID-19ワクチンには予防効果というベネフィットと様々な副反応が生じるかもしれないというリスクがあります。がん患者さんのワクチン接種のベネフィットとして、発症や重症化の予防、検査やがん治療を遅滞なくより安全に進められることがあります。効果や副反応の詳細については、「COVID-19ワクチンについて」の章を参照下さい。がん患者さんにおける副反応についての調査や報告はありませんが、がん患者さんにおける重症化の可能性を考慮すると、ベネフィットがリスクを上回ると思われ接種が推奨されます。がん患者さん一人一人がそのベネフィットとリスクを正しく理解して、主治医の先生と相談して、接種するかどうかを自分で判断することが必要です。

A:がんの治療法には、主に、手術、放射線照射、薬物治療があります。それぞれの治療別に、ワクチン接種の可否、タイミング、注意について説明します。

接種の可否:

手術予定あるいは手術後であってもCOVID-19ワクチン接種は前向きに検討すべきと考えられます。

接種のタイミング:

全米総合がん情報ネットワーク(NCCN)によるとがんの外科手術を受ける患者さんにおいてもワクチン接種が推奨されています1)。一方、The Royal College of Surgeons of Englandのガイダンスではワクチンを接種していないという理由で予定手術を延期したり、ワクチン接種のスケジュールによって手術日を変更することは推奨していません。手術とワクチン接種のタイミングとして考慮すべきこととして接種後の発熱や悪寒があります。発熱は1回目の接種ではまれですが、2回目の接種では約15%に発症すること、接種後1~2日、長くとも1週間以内に消退することが知られています。待機的に予定できる手術では、発熱がワクチンの副反応か手術に関連する発熱かの鑑別をしやすいように、接種から手術まで数日の間隔、最長でも1週間空ければ問題ないと考えられています2)。
計画的な脾摘を伴う術式を予定する場合、脾摘による免疫不全状態も考慮し、手術予定日の前後に2週間以上の間隔を設けて接種することが勧められます1, 3)

接種の可否:

放射線治療中あるいは治療前後であってもCOVID-19ワクチン接種は積極的に検討できると考えられます。

接種のタイミング:

ワクチン接種の時期、注射の場所、治療内容に関連した注意事項などについて、担当の放射線腫瘍医に相談することをお勧めします1)
ワクチン接種と放射線治療のタイミングに関するデータはありません。しかしながら、発熱・倦怠感などのワクチンの副反応で放射線治療を休止することは避けるべきですので、可能であれば翌日照射のない週末にワクチン接種を受けるのもよいかもしれません。また、抗がん剤と放射線治療を併用する場合は、「3.薬物治療」の項も参考にして頂き、抗がん剤投与日および投与予定日の数日以内、白血球、血小板が低下した骨髄抑制の時期は接種を避けた方が望ましいかもしれません。

接種後の注意:

ワクチン接種によって放射線治療の合併症が増強する心配はありません。骨髄抑制の時期でなければ、発熱や痛みが生じた場合、一般的な対応2)でよいと思われます。

COVID-19ワクチンは、インフルエンザワクチンや麻疹ウイルスに対するワクチンなど従来のワクチンとはメカニズムが大きく異なるため(詳細は「COVID-19ワクチンについて」を参照下さい)、がん治療中のインフルエンザワクチン接種などのようなこれまでの経験をそのまま当てはめにくい点など注意を要します。

接種の可否:

細胞傷害性抗腫瘍薬による治療中であってもCOVID-19ワクチン接種は前向きに検討すべきと考えられます。

接種のタイミング:

細胞傷害性抗腫瘍薬投与中、どのタイミングでワクチンの接種を行うのが望ましいかについては明確なデータはありません。このため現時点では細胞傷害性抗腫瘍薬投与中のどのタイミングでもワクチン接種を行うこともできますが、もし可能であれば以下のタイミングは避けた方が望ましいかもしれません。

  • ► 細胞傷害性抗腫瘍薬投与日(制吐剤として使用されるステロイドによるワクチン効果減弱の可能性)
  • ► 細胞傷害性抗腫瘍薬による骨髄抑制のため白血球数が最小になる時期(ワクチン効果減弱の可能性)
  • ► 血小板減少を伴うレジメンでの血小板減少時期(筋肉注射による血種のリスクを避けるため)
  • ► 細胞傷害性抗腫瘍薬投与予定日前の2,3日以内(ワクチン接種後2,3日は発熱を認めることがあるため)

接種後の注意:

骨髄抑制時期の前後でワクチン接種を行った場合、ワクチン接種の副作用による発熱なのか発熱性好中球減少症なのかの判断が困難となる可能性があります。発熱性好中球減少症のリスクについては個別の症例で判断する必要がありますが、判断に悩ましい場合には発熱性好中球減少症として対応することが望ましいと思われます。

接種の可否:

分子標的薬には小分子化合物、抗体薬など様々なものが含まれますが、一般に分子標的薬による治療中であってもCOVID-19ワクチン接種は前向きに検討できると考えられます。

接種のタイミング:

分子標的薬の大多数を占める小分子化合物の多くは連日の内服であるため、ワクチン接種を避けるべき時期は特に想定されません。

接種後の注意:

EGFRチロシンキナーゼ阻害薬など特に薬剤性肺炎に注意が必要な分子標的薬投与中にワクチン接種を行い、発熱を認めた場合、ワクチンによる発熱なのか薬剤性肺炎による発熱なのか検査を行わなければ判別がつきにくくなる可能性があります。薬剤性肺炎のリスクは、使用している分子標的薬の種類・使用期間など患者にそれぞれ異なりますので、個々の患者毎にワクチン接種後に発熱した場合の受診のタイミング、分子標的治療薬の休薬の要否など予め想定しておくことが望ましいと思われます。

接種の可否:

免疫チェックポイント阻害薬投与中であってもCOVID-19ワクチン接種は積極的に検討できると考えられます。

接種のタイミング:

一般に免疫チェックポイント阻害薬の体内での半減期は長いため、ワクチン接種の効果や安全性は接種のタイミングには左右されにくいと想定されます。このため現時点では免疫チェックポイント阻害薬投与中のどのタイミングでもワクチン接種を行うこともできますが、もし可能であれば以下のタイミングは避けた方が望ましいかもしれません。

  • ► 免疫チェックポイント阻害薬投与予定日前の2,3日以内(ワクチン接種後2,3日は発熱を認めることがあるため)

接種後の注意:

一部の分子標的薬と同様に免疫チェックポイント阻害薬でも薬剤性肺炎に注意が必要です。このため免疫チェックポイント阻害薬での治療中に、ワクチンを接種して発熱を認めた場合、ワクチンによる発熱なのか薬剤性肺炎による発熱なのか検査を行わなければ判別がつきにくくなる可能性があります。薬剤性肺炎のリスクは、患者によってそれぞれ異なりますので、個々の患者毎に、ワクチン接種後発熱した場合の受診の要否・タイミングについて予め想定しておくことが望ましいと思われます。

国内外の学会の考え方:

現在、各学会・団体からCOVID-19ワクチンに関する様々な考え方が出されています。ワクチン成分に対するアレルギー既往などの禁忌が無い限りは、がん患者さんにおいてもワクチン接種を前向きに検討すべきとしています(表1)。

表1 各学会・団体におけるCOVID-19ワクチン※に関する考え方

  細胞傷害性腫瘍薬による治療中 分子標的薬による治療中 免疫チェックポイント阻害薬による治療中
ACS1) 治療内容毎の個別記載なし
接種に関しては主治医とよく相談を
NCCN2) いつでも
(データがないため、抗がん剤の投与時期とワクチン接種のタイミングは問わない)
いつでも いつでも
(データがないため、免疫チェックポイント阻害薬の投与時期とワクチン接種のタイミングは問わない)
NCI3) 治療内容毎の個別記載なし
がん患者もワクチンを受けて良い
しかし、免疫抑制状態にある場合には効果が弱まる可能性を否定できないため、ワクチン接種後も十分な感染予防対策を継続すること
ASCO4) 治療内容毎の個別記載なし
がん治療中の患者もワクチンを受けて良い
ワクチン効果の減弱を避けるため、抗がん剤投与の合間や幹細胞移植後ある一定の期間を置いた後にワクチン接種を行うなど検討することができる
ESMO5 治療内容毎の個別記載なし
COVID-19以外のワクチンのデータを考慮すると、がん患者におけるワクチンの有効性と安全性は非がん患者と同様だと予想
有効性については、個々の状況によって異なるが、ワクチン接種のベネフィットがリスクを大きく上回ると想定される
接種のタイミングも個々の治療により異なる
理想的にはがん治療開始前が良いが、すでに治療を開始しているのであれば治療中でも良い
MSKCC6) ワクチンを受けて良い
抗がん剤投与とワクチン接種のタイミングについてデータはないが、可能であれば抗がん剤投与と投与の間で、白血球数が最小になる時期を避けてワクチン接種を行う 可能であれば、ワクチンの副作用が出やすい時期(接種後2,3日)と抗がん剤投与日が重ならないように注意する
ワクチンを受けて良い ワクチンを受けるべき
可能であれば、ワクチンの副作用が出やすい時期(接種後2,3日)と免疫チェックポイント阻害薬投与日が重ならないように注意する
SITC7) - - 免疫治療を受けているがん患者はワクチンを受けることができる、あるいは受けるべき
AACR8) 細胞傷害性抗がん剤治療を受けている患者は優先的にワクチンを受けることが重要 - 免疫治療を受けているがん患者は優先的にワクチンを受けることが推奨される
日本肺癌学会9) 可能ならば、細胞傷害性抗癌薬による骨髄抑制の時期を考慮して接種を検討する 骨髄抑制の頻度が少ないチロシンキナーゼ阻害薬などは、接種時期を問わず積極的に考慮されるべき ICI治療を受けている患者は、COVID-19ワクチンを接種すべき
可能であればワクチン接種とICI投与時期を調整することは考慮

※ 原則として、BNT162b2(商品名 コミナティ)およびmRNA-1273(モデルナ社)を想定する

ACS; American Cancer Society(米国がん協会)
NCCN; National Comprehensive Cancer Network(全米総合がん情報ネットワーク)
NCI; National Cancer Institute(米国国立がん研究所)
ASCO; American Society of Clinical Oncology(米国臨床腫瘍学会)
ESMO; European Society for Medical Oncology(欧州臨床腫瘍学会)
MSKCC; Memorial Sloan Kettering Cancer Center(メモリアルスローンケタリングがんセンター)
SITC; Society for Immunotherapy of Cancer(米国がん免疫学会)
AACR; American Association for Cancer Research(米国がん学会)

参考文献

ステロイド、その他カルシニューリン阻害薬などの造血幹細胞移植後に使用する薬剤、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象で使用しうる薬剤(IL-6阻害薬、ミコフェノール酸)などが挙げられます1, 2)
ステロイド一定量以上やその他の免疫抑制薬内服者はワクチンの臨床試験から除外されています。それは、理論上ステロイドによる免疫反応の減弱化に伴った免疫獲得率の低下が想定されているためです。
しかし、臨床試験では除外されていた、悪性腫瘍患者、固形臓器移植患者を含んだ研究であるイスラエルからの報告では、悪性腫瘍患者が2%前後(約12,000人)で含まれ、免疫抑制を起こしうる治療が行われていた患者は2.7%(約16,000人)でした4)。それらの対象者においても接種によりリ予防効果が報告されており、接種を推奨するものと考えられます。

接種の可否:

米国CDCや英国NHSでは免疫低下の状態にある患者さんでは、COVID-19の重症化リスクが高く、接種を行うことを推奨しています1, 3)。米国リュウマチ学会より、膠原病患者さんにおけるガイドラインが出されており、免疫抑制薬の治療の継続とワクチン接種のタイミングなどが紹介されています2)

接種のタイミング:

  • ステロイド(いずれの投与量においても)、免疫抑制薬/調整薬(ミコフェノール酸、IL-6阻害薬、カルシニューリン阻害薬、経口サイクロフォスファマイドなど)を使用している場合には、ワクチン接種のタイミングや免疫抑制薬の用量調節は不要とされています。
  • 新規に免疫抑制薬を開始する場合には、開始2週間前までのワクチン接種を推奨しています5)
  • COVID-19に対する治療薬としてもあげられるようなモノクローナル抗体薬を使用している場合には、最終投与後少なくとも90日間以上あけて接種することを考慮したほうがよいでしょう。
  • 造血幹細胞移植後の場合には、上記の免疫抑制薬の基準に加えて、移植後ワクチンアップデートにおける不活化ワクチン開始のタイミングである移植3ヶ月後が推奨されています。しかし、現時点では他の不活化ワクチンとの同時接種は推奨されておらず、COVID-19ワクチンと前後2週間の間隔をあけることが推奨されます。
    ※日本のガイドライン上は6ヶ月からが基本的推奨ですが、海外のガイドラインでは移植後の不活化ワクチン接種開始は3ヶ月からとなっています。
  • サイクロフォスファマイドの静脈投与の場合は、可能ならば、ワクチン接種の1週間後が推奨されます。
  • リツキシマブの場合は、可能ならば、ワクチン接種を次のリツキシマブの治療コースの4週間前に予定し、2回接種であれば接種後2~4週間間隔をあけて投与することが推奨されます。

接種後の注意:

副反応に注意を行うが、発熱が起きた場合の対応を主治医と事前検討しておくことが推奨されます。

接種の可否:

PS不良であってもCOVID-19ワクチン接種は考慮すべきと考えられます。

接種のタイミング:

PS不良患者では特に予後も勘案し接種のタイミングを検討するべきと考えます。

接種後の注意:

PS不良患者でも接種後に注意すべき点は通常の場合と同様と考えられますが、副反応が及ぼす影響は健常者より大きいと考えられ、慎重な経過観察が必要と思われます。

解説
イスラエルで実際に多くの人にCOVID-19ワクチンのひとつであるBNT162b2が接種され、60万人と非接種者60万人と比較し報告されています。70歳以上の高齢者でも、若年層と同様の有効性が認められました。また、併存疾患に関する検討では複数の併存疾患ではわずかに有効性が低くなる可能性が示唆されています1)。PS不良の患者さんは、厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症COVID-19診療の手引き、4.1版」2)に挙げられている重症化因子が複数該当する方も多く含まれていると推定され、ワクチンによるベネフィットが大きい対象とも考えられます。
一方で、2021年1月にノルウェーにおいてBNT162b2の接種後に死亡した高齢者の報告がありました。ノルウェー保健省は、報告された33例の多くは高齢で体力が衰え重篤な疾患があり、ワクチン接種との関連性は確認されなかったと評価しています3)。ただし、BNT162b2接種による発熱、食思不振、下痢などが、著しく衰弱した高齢者では重篤な病態や命にかかわることもあり得ることも言及しています。著しく体力が低下した状態(全介助でささいな疾患でも命にかかわりかねない、余命6ヶ月以内と考えられるなど)の患者さんの場合、個々の患者さんのベネフィットとリスクを十分に考慮することを勧めています4)。1月28日に欧州医薬品庁は、ノルウェーの事例に関して死亡原因は既存の疾患が要因と考えられ、虚弱な高齢者においてもワクチン接種に関する製品情報を変更する必要はないと発表しています5)。WHOも1月22日に、ワクチンが死亡の要因であると確定はできないこと、高齢者への推奨は変わらないと発表しています6)。
最新のデータを参考に、主治医の先生と予後も勘案し慎重に判断することが大切と考えられます。

A:差し支えなければ治療後であっても申告することを勧めます。

A:がんの治療後には、治療の時期、現在の状態など幅広い状況が含まれます。優先となるかに関しては主治医の先生に相談して下さい。

解説
米国CDCによると悪性腫瘍を基礎疾患に持つ方は、ワクチン接種対象者としての優先度が高く設定されています1) 。我が国の厚生労働省の優先接種の対象に含まれる疾患や病態のひとつとして、免疫の機能が低下する病気(治療中の悪性腫瘍を含む)をあげています2)。英国保健省もCOVID-19の重症化リスクの高い基礎疾患の優先順位を高くしており、治療中のがん患者を含めています3)。欧州臨床腫瘍学会では、治癒切除後5年未満の患者においても、化学療法中の進行がん患者さんと同様に重症化リスクの高い状態として扱うべきとしています4)
がんの治療後には、治療の時期、現在の状態など幅広い状況が含まれます。わが国において高齢者接種に続いて、基礎疾患のある方の優先接種が開始されます。ワクチン接種の優先となる基礎疾患に該当するか、該当する病状や状況であるかに関しては、主治医の判断、診断によるところが大きいと予想されます。主治医の先生に相談することがよいと考えられます。

A:接種部位を相談する選択肢もあります。

解説
ファイザー社によるBNT162b2(商品名 コミナティ)の添付文書や米国CDCでは、原則、三角筋での接種を推奨しています1, 2)。英国公衆衛生庁も原則、三角筋での接種としながらも、難しい場合には大腿(もも)での筋肉注射について言及しています3)
乳がんの手術側の三角筋にワクチンを接種した場合に、リンパ浮腫を起こしやすいかどうかについての知見は現時点では十分ではありません。BNT162b2の添付文書に、副反応としてリンパ節症(頻度1%未満)と記されています1)。英国のがんチャリティ団体CANCER RESEARCH UK4)や英国乳がんチャリティ団体Breast Cancer Nowのホームページ5)によると、BNT162b2の副反応としてリンパ節の腫れがあり、乳がんの治療後にリンパ浮腫がある場合、反対側の三角筋に接種するという選択肢、両側の手術後の場合には、大腿(もも)の筋肉に接種する選択肢を紹介しています。英国リンパ学会も、乳がんや皮膚がんのために手術や放射線治療を受け、リンパ節に治療が及んだ場合などには、反対側や大腿への接種を推奨しています6)
ワクチン接種後のリンパ節の腫れはがんのリンパ節転移とまぎらわしい可能性もあります。そのため、CTやPET-CTなどの画像検査を予定する場合には、可能であれば接種から4~6週間の間隔をあけることも考慮してほしいと記載されています7)
あらかじめ、主治医あるいはワクチン接種担当の医療従事者に相談しておくことを勧めます。

新型コロナウイルスワクチンには殖やしたウイルスを不活化しウイルス全体を抗原とする不活化ワクチンとスパイク蛋白のみを抗原とするものがあり、後者は精製したスパイク蛋白そのものを接種するもの、スパイク蛋白に翻訳されるmRNAを接種するもの、スパイク蛋白をコードするDNAをプラスミドまたはウイルスベクターに取り込ませて接種するものに分けられます。日本で輸入を予定している3つのワクチンの内、2021年2月より接種が始まっている米国ファイザー社とドイツのビオンテック社とが開発したワクチンBNT162b2(商品名 コミナティ)とモデルナ社が開発したワクチン(以下モデルナ社ワクチン)はSARS-CoV-2のスパイク蛋白をコードするmRNAワクチンです。mRNAとポリエチレングリコール(PEG)複合体が脂質二重膜につつまれており、筋肉注射により筋肉細胞の細胞質に取り込まれスパイク蛋白に翻訳されます。RNA自身にTLR7などを介したアジュバント効果が期待されるため、これまでのワクチンと異なりアジュバントが含まれていません。3~4週間の間隔をあけて2回接種することで抗体価を上げます。懸念されていた抗体依存性感染増強(ADE)の誘導は報告されておらず、効果も約95%とインフルエンザワクチンなどと比べてはるかに高い有効性が示されています。米国ではどちらのワクチンも2020年12月にはFDAの緊急使用承認を受けすでに接種が開始されています。安全性については、接種直後のアナフィラキシーショックやアレルギー反応がインフルエンザワクチンより高い頻度で報告されています。BNT162b2では100万回に13回、モデルナ社のワクチンでは100万回に2.5回の割合でアナフィラキシーを生じたと報告されています。日本でもBNT162b2の接種が開始され、2021年3月18日時点では約50万回接種されています。3月11日までに37件のアナフィラキシーと思われる事例が報告されていますが、ワクチン分科会副反応検討部会で検討された17事例のうち、ブライトンの基準で3レベル以上は7件でした。PEGは化粧品などに多く含まれており、女性でアナフィラキシーやアレルギーが多いことからワクチン成分のPEGが原因であるとの仮説が提唱されていますがまだ検証はされていません。英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、過去にワクチン接種で重大なアレルギー反応が現れたことのある人は接種しないよう勧告しています。また、mRNAは分解されやすいため低温での保管が必要です。特にBNT162b2は-80℃で輸送、長期保存する必要があり、-25~-15℃での保存は最長14日間、解凍後は冷蔵庫内(4-8℃)での保管期間は5日間とされています。モデルナ社ワクチンは解凍後冷蔵庫内(4-8℃)で30日間保存出来るとされています。
日本が輸入を予定している3つ目のワクチンは、英オックスフォード大学とアストラゼネカ社が共同開発したアデノウイルスベクターワクチンで2020年12月末に英医薬品・医療製品規制庁(MHRA)により緊急承認され、すでに接種が開始されています。このワクチンは前者2つとは異なり、チンパンジーの風邪ウイルス(アデノウイルス)ベクターにSARS-CoV-2のスパイク遺伝子を組み込んだもので、筋肉注射によりウイルスベクターが筋肉細胞核内に取り込まれmRNAに転写された後スパイク蛋白が産生されます。比較的安価に大量生産が可能で冷蔵庫(2~8℃)で保管できるなどのメリットがあります。治験での有効性は平均70%とmRNAワクチンよりは低めでしたが、初回に指定の1/2量を投与した群では90%の効果があり、現在追加の治験が実施されています。またアストラゼネカのワクチンは2021年2月に承認申請が厚労省に提出されており、ワクチン原液は第一三共が輸入し容器に充填し供給する準備を進めています。

https://www.anaphylaxis.org.uk/2020/12/10/mhra-statement-on-guidance-to-vaccination-centres-on-managing-allergic-reactions-following-covid-19-vaccination/ 外部サイトへ移動

その他、米ジョンソンエンドジョンソン社はヤンセンファーマが開発したヒトアデノウイルス26型ベクターにスパイク遺伝子を組み込んだワクチンの緊急使用の承認を2021年2月米国FDAより受けています。このワクチンは他のワクチンと異なり1回接種で66%の有効性を示し、85%の重症化予防効果を示しています。日本でもヤンセンファーマの日本法人が臨床試験を進めています。また、米国のバイオテクノロジー企業ノババックス社は昆虫細胞で作らせた精製スパイク蛋白に同社独自のアジュバント「Matrix-M」を添加したワクチンを開発し、2021年5月の緊急使用承認を目指してFDAへの申請を準備中です。武田薬品はノババックス社と提携し、国内でワクチンを製造販売する計画を発表しています。武田薬品は前述のモデルナ社mRNAワクチンも国内で製造販売する計画を発表し2021年3月に厚労省に承認申請を提出しています。国内企業によるワクチンではアンジェス社がプラスミドDNAを使ったワクチンの第2/3相試験を2020年12月に塩野義製薬は国立感染研との共同開発で精製スパイク蛋白を抗原とするワクチンの第1相試験を2020年12月に開始しています。また、ロシア、中国などで開発されたワクチンも接種が開始されています。ロシアは第3相試験なしに世界に先駆けて2020年8月にワクチン(スプートニクV)を承認したことが問題視されていますが、1回目と2回目で異なる型(26型と5型)のヒトアデノウイルスベクターを用いることでアデノウイルス蛋白に対する免疫反応を抑えるよう工夫されており91.4%の有効性を発表しています。中国ではシノファーム社とシノバック社などが従来型の不活化ワクチンを開発しています。シノファーム社ワクチンはUAE、バーレーンで86.1%の有効性が示され緊急使用が承認されています。
これらのワクチンは全て武漢で見つかったウイルス株を元に作られており、中和抗体の標的となるスパイク遺伝子の変異が多く蓄積したウイルスに対してはワクチンの効果が低下する可能性があります。

主なワクチンの特徴

製薬企業など 名称 ワクチンタイプ 接種方法 備考
ファイザー BNT162b2
製品名「コミナティ筋注」
mRNA 筋注2回、21日間隔 緊急使用承認済み、輸入中
モデルナ mRNA-1273 mRNA 筋注2回、28日間隔 緊急使用申請中(武田薬品)
アストラゼネカ ChAdOx1 ウイルスベクター
(チンパンジーアデノウイルス)
筋注2回、4-12週間隔 緊急使用申請中(第一三共)
J&J Ad26.COV2.S ウイルスベクター(ヒトアデノウイルス26型) 筋注1回 ヤンセンファーマ
ノババックス NVX-CoV2373 精製蛋白(昆虫細胞で産生) 筋注2回 武田薬品
シノファーム BBIBP-CorV 不活化ワクチン 筋注2回 輸入予定なし
ガマレヤ疫学・微生物研究所 スプートニクV ウイルスベクター[ヒトアデノウイルス26型(1回目)・5型(2回目)] 筋注2回 輸入予定なし

ワクチンを接種後はCOVID-19発症や重症化が予防されることが示されていますが、感染予防に関するデータは十分に得られていません。ワクチン接種者でも不顕性感染により感染を拡大させる可能性が残っており、ワクチン接種後もマスクをすることが推奨されています。

新型コロナワクチンについてのQ&A|厚生労働省 (mhlw.go.jp) 外部サイトへ移動

SARS-CoV-2はゲノムサイズ29.9kbのうち平均して一か月に2か所くらいの変異が蓄積しています。多くの変異は感染力や病原性に影響を与えることはありませんが、感染拡大が続くと確率的に免疫回避や伝播力の高い適応変異が現れる可能性が増加します。中でもスパイク遺伝子内の変異は感染性や中和抗体の効果に影響を与えるため注目されています。
SARS-CoV-2のスパイク蛋白は1,273アミノ酸からなり、3量体としてウイルス表面に多数存在します。スパイク蛋白の受容体結合ドメイン(RBD)を介して細胞表面にあるACE2と結合後、furinプロテアーゼによりR685/S686の間で切断されS1サブユニットとS2サブユニットに分かれます。S2サブユニットはさらにTMPRSS2によりR815/S816のS2’部位で切断を受けウイルスの膜融合が促進されます。ACE2受容体結合ドメイン(RBD)はS1サブユニット内にあり、中和抗体の多くはRBDを認識して結合します。そのため、この領域のアミノ酸の変異が特に注目されています。日本ではスパイク蛋白のD614G変異株が主に流行しています。約100種類のスパイク領域の変異株の感染力と中和抗体に対する反応性を比較した結果、D614G変異は元株に比べ感染力が上がっていることが2020年9月号のCELL誌に報告されています。  
また、N234Q, L452R, A475V, V483Aなどの変異はいくつかのモノクローナル中和抗体に対する反応性が低くなると報告されています。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32730807/ 外部サイトへ移動

変異株のうち注目すべきものはVOI (varinant of interest)として命名され、感染性や病原性の増加が懸念されるものはVOC (variant of concern)となります。これまでに報告されている主なVOCはイギリス、ブラジル、南アフリカで見つかった変異株です。イギリスのケント州で流行が拡大したB.1.1.7と呼ばれる変異株には23か所と通常より多い変異が見られ、そのうち9か所はスパイク遺伝子内に見つかっておりVOC202012/01と命名されています。このイギリス変異株には日本で流行しているD614G変異に加えN501Y変異がありヒトやマウスのACE2への親和性が増していることが示されています。

https://www.cogconsortium.uk/news_item/update-on-new-sars-cov-2-variant-and-how-cog-uk-tracks-emerging-mutations/ 外部サイトへ移動

南アフリカやブラジルではスパイク遺伝子内のE484K変異株が流行しており、人での伝播性が増していることが示唆されています。日本で見つかる変異のモニタリングは国立感染研究所が行っており結果を公表しています。

https://www.niid.go.jp/niid/ja/diseases/ka/corona-virus/2019-ncov/10084-covid19-28.html 外部サイトへ移動

2020年8月と12月に日本で採取されたウイルスにもE484K変異が見つかることを慶応大学のグループが発表しており、海外から流入した変異株だけでなく、国内で同じ変異をもつウイルスが出現していることが示唆されています。また、イギリス変異株の中にもE484K変異を持つものが見つかっています。ACE2への親和性が増したウイルスはヒトからヒトへの伝播性が増すだけでなく、体内で全身への感染拡大が短時間に起こる可能性があり重症化につながる可能性があります。これらの変異株では当初重症化率や死亡率に差がないとの疫学調査が報告されましたが、解析の進んでいるその後のイギリス変異株の報告ではやや増加しているとの論文が複数発表されてきています。イギリス変異株は最大1.7倍に伝播性が増していると報告されていますが、実際の伝播性は実効行再生産数として計測されマスク着用などの感染対策により下げることが可能です。

https://science.sciencemag.org/content/early/2021/03/03/science.abg3055.full 外部サイトへ移動

<作成>
がん関連3学会(日本癌学会、日本癌治療学会、日本臨床腫瘍学会)合同連携委員会
新型コロナウイルス(COVID-19)対策ワーキンググループ(WG)

■WG長
寺嶋 毅(東京歯科大学市川総合病院 呼吸器内科)
■WGメンバー
【日本癌治療学会】
江藤正俊(九州大学大学院医学研究院 泌尿器科学分野)
掛地吉弘(神戸大学大学院医学研究科 食道胃腸外科)
調 憲(群馬大学大学院医学系研究科 総合外科学講座肝胆膵外科分野)
西村恭昌(近畿大学医学部 放射線腫瘍学部門)
藤原俊義(岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 消化器・腫瘍外科学)
【日本癌学会】
清野 透(国立がん研究センター 先端医療開発センター)
高山智子(国立がんセンターがん対策情報センター がん情報提供部)
松尾恵太郎(愛知県がんセンター研究所 がん予防研究分野)
松岡雅雄(熊本大学生命科学研究部 血液内科)
三森功士(九州大学病院別府病院 外科)
【日本臨床腫瘍学会】
市原英基(岡山大学病院 呼吸器・アレルギー内科)
小林信明(横浜市立大学附属病院 呼吸器内科)
小山泰司(神戸大学医学部付属病院 腫瘍・血液内科)
姫路大輔(県立宮崎病院 内科)