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2010年09月22日
米国マイロターグ発売中止に対する日本臨床腫瘍学会の見解

2010年9月18日

今回の“マイロターグ販売中止と自主的な承認の取下げ”の理由とされた第III相臨床試験(SWOG S0106試験)では、未治療の急性骨髄性白血病患者(AML)を対象に、標準的な初回寛解導入療法であるダウノルビシンとシタラビンの併用療法(DA療法)へのマイロターグ(GO)の併用効果、及び、大量シタラビン療法による地固め療法後のGOの追加投与の効果について、いずれも有効性が認められず、逆に有害事象の発現率がGO併用群で有意に高いと報告されています(ASH2009)。これに基づき、ファイザー社が上記の判断をくだしたとされています(ファイザー2010年6月22日プレスリリース)。
日本においては、GOの効能・効果は「再発又は難治性のCD33陽性の急性骨髄性白血病」とされ、しかも「他の抗悪性腫瘍薬と併用しないこと」と明記されております。したがって、対象・用法の異なるSWOG試験の結果が直ちに、日本におけるGO使用に関して、安全性・有効性に関する重大な懸念に結びつくとは考えていません。日本としては、治験や市販後全例調査を通じて独自のデータを集めており、今後とも、添付文書通りの適正な使用を進めていくべきであると考えます。
なお本薬剤の再発例の寛解導入率は内外の報告では30%弱で、市販後の全例調査によると、全396例中完全寛解率は7.8%で奏効率は14.1%でした。急性前骨髄球性白血病に限ると奏功率はかなり高くなりますし、有効薬剤の少ないAML再発例においてその役割は十分あると考えています。英国MRCではAML15試験が進められており、SWOG試験と同様GOランダム化試験が行われていますが、中間解析では予後良好AMLに対する上乗せ効果が報告されています1)。以上を総合的に判断し、日本での保険適応の範囲の使用であれば発売中止までの措置は必要ないと考えています。

特定非営利活動法人日本臨床腫瘍学会
理事長 田村和夫

【参考】
Larsonら2)は、1回目の再発、急性骨髄性白血病(AML)277例に、マイロターグを投与。1回の投与で寛解に至らない症例には、2週間間隔で最高3回まで使用した。完全寛解13%、血小板の回復のみ遅れた形態学的寛解は13%で、2つを合わせた全寛解率は26%であった。
日本でも、再発・難治急性骨髄性白血病(再生・難治性AML)の 20例に臨床試験が行われ3,4)、結果は海外の試験とほぼ同様である。完全寛解を5例 (25%)、形態学的寛解を1例 (5%) に認めた。寛解に至った6例の、寛解導入に要した期間の中央値は62日。本剤の最終投与日から、500/μl以下の期間の中央値は23日、また、血小板数25,000/μl以下の期間の中央値は28日であった。
一方、日本における市販後の全例調査の結果では、全396例中完全寛解率は7.8%で奏効率は14.1%。有害事象発現率は88.31%、グレード3以上の有害事象が79.5%。VOD/SOS発生率は全体で5.4%(グレード3以上4.4%)、感染症が32.0%(25.9%)、出血が13.2%(8.1%)、注射部位の反応47.3%(24.1%)、肺障害4.0%(3.5%)、腫瘍崩壊症候群3.1%(3.1%)であった(薄井他、日本血液学会2008)。
さらに、日本において、再発・難治性AML患者19人に対して、MRC-AML15と同様の低用量GOと標準的化学療法の併用療法の第I相臨床試験が行われ、安全性が報告された(薄井他、日本臨床血液学会2010)。

【文献】

  • Gleissner B et al. Gemtuzumabozogamicin (mylotarg) for the treatment of acute myeloid leukemia-ongoing trials. Onkologie 2007;30:657-662.
  • Larson, R. A. et al. Final report of the efficacy and safety of gemtuzumabozogamicin (Mylotarg) in patients with CD33-positive acute myeloid leukemia in first recurrence. Cancer. 2005;104: 1442-1452
  • 吉場史朗ほか.急性骨髄性白血病(AML)に対するCMA676の有効性と安全性の評価-第2相臨床試験の報告 [abstract]. 臨床血液. 2005;46:17, (WS2-2)
  • Kobayashi Y.Phase I/II study of humanized anti-CD33 antibody conjugated with calicheamicin, gemtuzumabozogamicin, in relapsed or refractory acute myeloid leukemia: final results of Japanese multicenter cooperative study. Int J Hematol. 2009;89:460-469.