理事長レター
理事長レター Vol.7
7月27日から29日に神戸で開催された第15回日本臨床腫瘍学会学術集会に、多くの会員の皆さまにご参加いただき心より感謝申し上げます。今年も昨年とほぼ同じ約6700名の方に参加をいただき、谷本光音学術集会長のもと学術集会が成功裏に終わったことを大変嬉しく思っています。
私は2013年に仙台で開催された第11回日本臨床腫瘍学会での総会翌日から、田村和夫元理事長の後を受け、2期4年間日本臨床腫瘍学会の理事長を務めさせていただきましたが、今年の総会で理事長を神戸大学腫瘍・血液内科の南博信教授へ引き継がせていただきました。
私が理事長に就任するにあたり、当面の課題として掲げたのは、学会の公益法人化とがん薬物療法専門医を内科のサブスペシャルティとして新専門医制度へ組み込むことでした。前者については、事務局など関係各位の努力もあり2015年に特定非営利活動法人から公益社団法人へ移行することができました。
後者については、新専門医制度の開始そのものが当初の予定よりも1年遅れたこともあり、まだ成し遂げるに至ってはいません。しかし、2014年5月16日に日本医学会から日本専門医機構に提出された、「がん領域に関する専門医制度についての提言」 では、「内科サブスペシャルティに腫瘍内科を新たに加える」ことが明記されています。「内科サブスペシャルティに腫瘍内科を新たに加える」ことに関しては、日本内科学会、日本専門医機構などと協議を重ね、すでに日本内科学会認定制度審議会および内科系関連13学会協議会で承諾が得られています。明確な時期は分かりませんが、今後は日本専門医機構での最終的な議論になるものと見込まれます。
このように、がん薬物療法専門医を内科のサブスペシャルティとして新専門医制度へ組み込むことに関しては、ある程度道筋が見えてきました。南新理事長に引き続きご尽力いただければと思いますが、初代専門医制度委員会委員長の福岡正博先生が言われた「医師のための制度ではなく、患者のための専門医制度である!」は、今後も変わることはありません。
専門医制度以外に日本臨床腫瘍学会が特に重点を置くべき事項としては、学会の国際化と国際的に通用する次世代のリーダー育成です。
日本臨床腫瘍学会が目指すのはASCO, ESMOにならぶアジアのMedical Oncologyの中心学会になることです。そのためにはアジアを中心とした海外からの参加者を増やし、英語でのセッションを拡大し、質の高いオリジナル演題をできるだけ多く発表してもらうことが重要です。特に、アジアを中心とした海外からの若い参加者を増やし、彼らがリピーターとなってくれるような魅力ある学術集会にすることが必要です。
一方で、教育、専門家の育成などの対象は必ずしも医師のみではなくメディカルスタッフも重要な対象であり、学術集会を全て英語で行うことは現実的ではありません。メディカルスタッフを中心としたセッションや教育セッションを充実されることも必要で、日本語の教育セッションを必要に応じて英語に同時通訳すれば、国内のメディカルスタッフのみならず海外からの参加者にも有意義な企画となるはずです。
専門医制度や日本の医療に関する社会的な問題に関するセッションも必要で、このようなセッションは従来どおり日本語で実施すべきです。日本特有の諸問題に配慮しつつ、日本臨床腫瘍学会が一歩でも、ASCO, ESMOに近づけるような学会に成長することを願っています。
国際的に通用する次世代のリーダー育成については、少人数での「Medical OncologistのためのPreceptorship」、「JSMO/ASCO Young Oncologist Workshop」などを計画しています。いずれの企画も参加できる人数が限られており、公平に参加者を選択することが重要です。このような取り組みを今後益々、充実させていければと思います。
1961年に行われたアメリカ合衆国第35代大統領ジョン・F・ケネディの就任演説のなかの有名な言葉に、「国があなたのために何をしてくれるかではなく、あなたが国のために何ができるかを考えようではありませんか」があります。日本臨床腫瘍学会では、2013年に「国民の福祉」「がん診療」「会員活動の支援」「教育」「研究」「専門家の養成」「情報の提供」「組織の強化」「国際化」の9項目からなるビジョン&ミッションを示しました。日本臨床腫瘍学会のビジョン&ミッションは最終的には全てが「国民の福祉」に帰結するものです。そのためには、会員の皆さま、特にがん薬物療法専門医に期待される役割は極めて大きいと言えます。ひとりひとりの会員が日本臨床腫瘍学会の活動をとおして、国民のために何ができるかを是非、考えていただければと思います。
4年間、各方面から多大なご支援をいただき大変感謝しております。南博信新理事長が、さらに日本臨床腫瘍学会を大きく発展させるものと期待していますが、引き続き皆様方のご支援をよろしくお願い申し上げます。
2017年8月18日
日本臨床腫瘍学会
前理事長
大江裕一郎
バックナンバー
- 理事長レターVol.19「新年のご挨拶」(2024年元旦)
- 理事長レターVol.18「暑中御見舞い」(2023年(令和5年)7月吉日)
- 理事長レターVol.17「新年のご挨拶」(2023年元旦)
- 理事長レターVol.16「新年のご挨拶」(2022年1月吉日)
- 理事長レターVol.15「暑中御見舞い」(2021年(令和3年)7月吉日)
- 理事長レターVol.14「新年のご挨拶」(2021年(令和3年)1月吉日)
- 理事長レターVol.13「新年のご挨拶」(2020年1月1日)
- 理事長レターVol.12「MOGA 2019に参加して」(2019年(令和元年)8月)
- 理事長レターVol.11「新年のご挨拶」(2019年1月1日)
- 理事長レターVol.10「がん薬物療法専門医が専門医機構によりsubspecialtyとして認定されました。」(2018年6月21日)
- 理事長レターVol.9「Best of ASCO、腫瘍内科学セミナー、専門医申請について」(2018年6月7日)
- 理事長レターVol.8「新年のご挨拶」(2018年1月1日)
- 理事長レターVol.7「大江前理事長より」(2017年8月18日)
- 理事長レターVol.6「Best of ASCO、専門医試験について」(2017年5月29日)
- 理事長レターVol.5「第15回学術集会、会員アンケートについて」(2017年3月17日)
- 理事長レターVol.4「学術集会会場、ガイドライン/ガイダンス発刊について」(2017年1月6日)
- 理事長レターVol.3「専門医制度の進捗状況について」(2016年11月24日)
- 理事長レターVol.2「学術集会について」(2016年7月4日)
- 理事長レターVol.1「新専門医制度について」(2016年5月6日)