会員の皆さまへ

トップページ > 会員の皆さまへ > 理事会より > 理事長レター

理事長レター

理事長レター Vol.4

日本臨床腫瘍学会 理事長 大江裕一郎

 日本臨床腫瘍学会会員の皆様、良いお年をお迎えのことと心よりお慶び申し上げます。今年が皆様にとりまして、素晴らしい年になりますよう祈念しております。

 2002年に設立された日本臨床腫瘍学会も、早いもので今年で15周年を迎えます。その間、学会の公益社団法人化、専門医制度の構築、学術集会の国際化、臨床腫瘍学の教科書刊行、ガイドラインの策定、教育セミナーやBest of ASCO® in Japanの開催などを行ってまいりました。関係各位のご尽力により、それぞれ成果を上げていますが、今年はこれらの活動をさらに躍進させる年になればと思っています。
昨年12月に改正がん対策基本法が成立しました。今年は第3期のがん対策推進基本計画が、改正がん対策基本法に基づき策定される予定ですが、ゲノム医療がさらに推進されるものと期待されます。免疫療法とともにゲノム医療が、がん薬物療法の中心となっていくことは間違いありません。ゲノム医療の推進は、会員の皆様が最も注目している分野ではないかと思います。

 昨年の第14回学術集会に引き続き、今年も第15回学術集会 外部サイトへ移動 が同じく神戸で、谷本光音学術集会長のもと、「最適のがん医療ーいつでも、何処でも、誰にでもー」をテーマに開催されます。今年も皆様と神戸で、お会いできることを楽しみにしています。来年の第16回学術集会までの3年間、神戸での連続開催となりますが、その理由に関しては理事長レターVol.2で説明させていただいたとおりです。

 2019年の第17回学術集会以降を、どこで開催するかに関しても慎重に議論してまいりました。まず、開催地を数年間同一地とするか、毎回別の開催地とするかが問題となりますが、同一開催地での連続開催でどのような影響が出るかはまだ分かりません。神戸での3年連続開催の実績をみて判断する必要があります。2019年以降の会場選定で最も重要なことは安定した会場確保にあります。2020年の東京オリンピックの影響で、東京近郊の会場確保は極めて難しい状況です。学術集会の参加者数も、お陰様で年々増加しています。昨年の学術集会では、約6,700名の参加があり、2019年以降は7,000-8,000名もしくはそれ以上の参加者が見込まれます。この規模の学術集会ができる会場は日本では限られています。

このような観点から、複数年開催を前提に会場選定の選考会を実施したところ、仙台、名古屋、大阪、京都、神戸、福岡の6施設から応募をいただきました。会場の選定にあたり、最も重視したのは500-600人が収容できる規模の会場が十分に確保できるか否かです。また、費用、交通の便、宿泊施設などについても評価しました。今回、最も評価の高かったのは、神戸でした。しかし、神戸での長期間同一地開催は避けるべきとの判断で、次に評価が高かった京都で、2019年から2021年までの3年間、学術集会を開催することに決まりました。

京都開催で最も懸念されるのは、宿泊施設の確保です。7月は祇園祭もあり宿泊施設の確保が難しいのではないかとの意見も出されましたが、施設側より、宿泊施設は観光協会、旅行会社との連携により確保可能との回答がされています。早目の宿泊施設の予約をお願いすることになるかとは思いますが、手の届く価格帯の宿泊施設確保はどうにか可能と判断しています。暑い夏の京都ではありますが、白熱した学術集会になればと願っています。

 日本臨床腫瘍学会では、昨年の11月に「大腸がん診療における遺伝子関連検査のガイダンス 第3版」を、12月に「がん免疫療法ガイドライン」を相次いで刊行しました。是非、会員の皆様の日常診療に活用していただければと思います。
「大腸がん患者におけるKRAS遺伝子変異の測定に関するガイダンス第1版」を2008年に、「大腸がん患者におけるRAS遺伝子(KRAS/NRAS遺伝子)変異の測定に関するガイダンス第2版」を2014年に発刊してきましたが、その後の急速な研究の進歩により、大腸がんにおいてもRAS遺伝子のみならずBRAF V600E遺伝子変異やDNAミスマッチ修復機能欠損が臨床上重要な情報であると考えられるようになりました。そして今回、第2版の発刊から2年の経過で、「大腸がん診療における遺伝子関連検査のガイダンス第3版」を発刊するに至りました。

 免疫チェックポイント阻害薬の登場により、免疫療法が急速に注目を集めていますが、その使用においては多くの課題を抱えていることも事実です。これまでの治療にはみられない効果が期待される一方、免疫関連の有害事象が出現することや、効果が一部の症例に限られているものの無効例を選別するバイオマーカーが確立していないこと、高額な薬剤費など、解決すべき課題も多く存在しています。
そこで、日本臨床腫瘍学会では日本での免疫治療の適正使用を推進するために、日本がん免疫学会、日本臨床免疫学会の協力のもと「がん免疫療法ガイドライン」を刊行しました。免疫療法に関するエビデンスの記載は、日進月歩の免疫療法に追いつくことが非常に困難ですが、今後も定期的な改訂を行いUp-to-dateな情報提供をしたいと考えています。これらのガイダンス・ガイドライン策定にご尽力された関係各位には、心より敬意を表したいと思います。

 最後に、今年が会員の皆様にとっても、日本臨床腫瘍学会にとっても飛躍の年になることを願っています。今年も引き続き関係各位のお力添えを、よろしくお願い申し上げます。

 

2017年1月6日
日本臨床腫瘍学会
理事長
大江裕一郎

バックナンバー