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理事長レター

理事長レター Vol.1

日本臨床腫瘍学会 理事長 大江裕一郎

風薫るさわやかな季節となってまいりましたが、会員の皆様は如何お過ごしでしょうか。
理事長の大江裕一郎です。会員の皆様には日頃より、学会活動にご理解、ご協力をいただきありがとうございます。まずは御礼を申し上げます。

この度、会員の皆様とのより良いコミュニケーションを構築するために、「理事長レター」を発行することになりました。発行はいまのところ不定期ですが、会員の皆様の気になる情報を中心に私の考えなどをお伝えできればと思っております。初回はまず「新専門医制度」に対する学会の考えと現状をお伝えします。

日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医は2006年に47名が誕生し、現在では1,138名が認定され活躍されています。ご承知のように、症例報告、筆記試験、面接試験という高いハードルがあり合格率も60%前後という数ある専門医の中でも最も難しく、それだけ価値のある専門医の一つであると考えます。このようながん薬物療法専門医資格を取得された先生には、心より敬意を表します。

そのなかで多くの先生が気にされているのは、新専門医制度の中でがん薬物療法専門医がどう位置付けられていくかではないでしょうか? 新専門医制度は2017年度から内科、外科などの基本領域専門医の研修を開始する予定で準備が進められていますが、一部に延期を求める意見もあり開始時期に関しては不確定なところがあります。がん薬物療法専門医を含めがん領域の専門医制度をどのように構築するかの議論は、日本専門医機構の中の「がん診療の専門医に関する委員会」で議論されることになっていますが、この議論はいまだ開始されていません。基本領域の専門医制度が確定してから議論が開始される予定となっていましたが、前述のように基本領域の専門医制度についてもいまだ流動的な状況であり、がん領域の専門医制度に関する議論を開始するには至っていません。

また、がん領域の専門医制度に関しては、2014年5月16日に日本医学会から「がん領域に関する専門医制度」についての提言」が日本専門医機構に提出されています。その提言の第1番目は、「内科サブスペシャルティに腫瘍内科を新たに加える」となっています。日本専門医機構での、がん領域の専門医に関する議論は、いまだに開始されていませんが、この提言に基づいて議論されることは間違いないと考えます。現存する日本の専門医のなかで「腫瘍内科」の専門医となり得るのは、日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医以外にないことは誰の目からも明らかです。

では、「腫瘍内科」専門医となると内科以外の基本領域の専門医を持つ医師が取得できなくなるのではとの懸念があるかもしれません。この点に関しては、日本専門医機構の池田理事長より内科以外の医師に門戸を閉ざさないで欲しいとの意向が示されています。専門医の名称をどうするかなどの問題もでてきますが、今後、この点に関しても議論されるものと思います。

今年の秋に、日本専門医機構からの専門医制度に関するヒヤリングが実施されると聞いています。このヒヤリングは新たにサブスペシャルティ領域に追加すべき専門医制度に対して行われるもので、現在、日本臨床腫瘍学会ではワーキンググループを立ち上げがん薬物療法専門医制度を新専門医制度に適合させるべく作業を進めています。新制度では特に指導医の役割が増すものと思われますが、これまでの我々の専門医制度の理念を継承しつつより良い専門医制度を構築していく所存です。

さらに主な基本領域となる内科との連携も重要な課題です。免疫チェックポイント阻害薬のような多種多様な副作用が発現する薬剤が登場したこともあり、腫瘍内科医(がん薬物療法専門医)に以前にもまして幅広い内科学の知識が重要となってきております。逆に腫瘍を専門としない内科医も地域医療などにおいて、終末期などを含めがん患者さんの診療をする機会も少なくありません。このような状況から、新専門医制度を構築するにあたり日本内科学会と日本臨床腫瘍学会で緊密に連携することは非常に重要です。日本内科学会の理解が得られるよう働きかけていきたいと思います。

新専門医制度におけるがん薬物療法専門医の位置づけが正式に決まらずに不安に思っている専門医の先生も少なからずいらっしゃるかも知れませんが、日本の専門医制度のなかでも最も高尚な理念に基づく日本臨床腫瘍学会のがん薬物療法専門医がなくなることなど絶対にありません。
初代専門医制度委員会委員長である福岡正博先生が言われた言葉「医師のための専門医制度ではなく、患者のための専門医制度である」をよく思い出してください。

2016年5月6日
日本臨床腫瘍学会
理事長
大江裕一郎